~法事の席で気づいた、お稽古のちから~
先日、祖父母の法事に出席し、畳の広間で過ごす機会がありました。
そのとき、ふと気づいたことがあります。
畳の上を歩くという、ごく当たり前の動作が、以前よりも自然にできている。
香道のお稽古で長年繰り返してきた所作が、思いがけない場面で生きていたのです。
畳の上には、いくつもの作法があります
和室では、畳の縁を踏まない、敷居を踏まないなど、昔から大切にされてきた約束事があります。
畳の縁は、単なる畳の端ではありません。
歴史をたどると、縁の文様によって身分や格式を表した時代もあり、家紋を織り込んだ「紋縁(もんべり)」もありました。

茶道や香道では、畳の位置によって人や道具の居所が定められ、それぞれにふさわしい所作があります。
私が学んでいる香道直心流でも、畳の上での歩き方には細かな決まりがあります。
例えば、
・半畳を二歩で歩く
・畳の縁を踏まない
・足の指先を滑らせるように歩く
・曲がり角での向きの変え方
・上座、下座による足の使い分け
・居所回りでは、お客様にお尻を向けない
など。
一つひとつの所作を繰り返し稽古し、少しずつ身体に馴染ませていきます。
お稽古の所作が、日常の中で
今回の法事では、御仏前へ進み、お参りをする場面がありました。
すっと席を立ち、横へ移動する。
お坊様の斜め前で止まり、お坊様の方を向いて一礼。
御仏前へ進み、礼をして、下がり、歩いて元の席へ戻る。
たったこれだけの動作です。
けれど、その一連の足の流れが、今回は自分でも驚くほど自然に、そしてきれいにできた気がしたのです。
何度も繰り返してきた稽古が、知らず知らずのうちに身体に馴染んでいたのでしょう。
かなり嬉しくなりました。
作法は、特別な場所だけのものではない
香席では、香炉を持つ。
お客様の前を通る。
座る。
立つ。
道具を扱う。
その一つひとつに所作があります。
こうした動きは、香席の中だけで必要とされるものではありません。
法事の席でも、茶席でも、日常の和室でも、身体の動きや人との距離を意識する場面があります。
作法とは、決められた形を覚えることだけではなく、その場にふさわしい立ち居振る舞いを身につけていくことなのかもしれません。
自分の動きを整え、そこにいる人や、その場を大切にする。
長く続けてきたお稽古が、日常のふとした場面で生きてくる。
今回の法事は、そんなことを改めて感じる機会となりました。
香道のお稽古では、香りを聞くことはもちろん、こうした所作も大切にしています。
香りに向き合う前に、まず自分を整える。
その積み重ねもまた、香道の大切な学びの一つなのですね。
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