インタビュー想定

5月下旬、某社の動画撮影がありました。

その際のインタビュー想定案を練っていたので(笑)、ここに記しておきます。

香道とは何か/知られていない理由

歴史は省略。

香道とは、香りを通じて静かな気づきの状態に入る、日本の伝統芸道です。茶道や華道と並び、何世紀にもわたって磨かれてきた哲学・礼法・美意識を備えた、完結した芸の体系です。

あまり知られていない理由——それは「見えない」からだと思います。人は形のあるものに安心しますよね。

茶碗は手に取れる。花は目に見える。でも香りは、届いた瞬間に消えていく。

香道は、留めておけないものに、全身で向き合うことを求める芸です。写真には撮れないし、言葉でも説明しにくい。でも、それこそが香道の品格だと、私は思っています。


なぜ香りを「聞く」と言うのか

香道では、香りを「嗅ぐ」ではなく「聞く」と言います。

「聞く」という言葉には、能動的で謙虚な注意が含まれています。

音楽を「聴く」とき、ただ音を受け取るのではなく、それと向き合い、解釈し、心を動かされますよね。香りも、同じ質の注意を向けるに値するものだと思っています。「嗅ぐ」は鼻がするもの。「聞く」は、全身で在るということ。

香りからのメッセージを受け取る。 

何か発しているのを受け取る=聞く と考えても良いと思っています。

もちろん聞香の時の香りを聞く所作も耳が香炉に近づくのでそのようにも伝わっています。


お手前とは

お手前とは、香を準備し、場に整えるための、定められた所作と手順のことです。でもそれは単なる技術ではありません。道具の持ち方、炭の動かし方、灰の整え方——ひとつひとつの所作が、機能的かつ美しくなるよう磨かれてきました。お手前の迷いがあるとき、ご指導いただくその型を考えると、自然の美を意識していていけばよいことが多くあります。お手前を稽古することは、身体を通じた瞑想のようでもあります。修行のようでもありますが、体が、急がないことを覚えていく一つのきっかけにもなっています。


香道を始めたきっかけ

母が師範で、という流れ。

でも、もともと、香りというものに、説明のつかない引力を感じていたのだと思います。たったひとつの香りが、時間や記憶や感情を連れてくる——そのことに、ずっと魅了されていたんです。香道に出会ったとき、その体験を丸ごと扱う芸道がここにあると気づきました。なんだか安心したような気持地になったことを覚えています。

儀式を習うというより、ずっと知っていたけれど言葉にできなかったものの、言語を見つけた感覚でした。


各体験の解説

香木の種類と貴重さ

香道で使われる素材は「香木」。「沈香(じんこう)」です。沈香は、熱帯の特定の樹木が傷や感染に応じて長い年月をかけて形成する、樹脂状の変容の産物です。数十年、時に数百年かけて生まれ、同じ香りのものは二つとありません。日本の皇室が千年以上大切にしてきた香木もあります。その一片を炷くとき、私たちはその歴史と対話しているのだと感じることが多いです。


組香と古典文学

組香とは、古典的なテーマ(和歌・俳句など)と組み合わせた、香の聞き分けの遊びです。『源氏物語』や『枕草子』、季節の和歌などが題材になります。参加者はいくつかの香を聞き比べ、どれがどれかを名乗り紙(記録紙)に書き留めます。文学のテーマは飾りではありません。それは古の想像の空間——ある気分、ある季節、ある人の感情——を思い起こさせ、香がその世界に入るきっかけともなるのです。感覚で体験する、とも言えます。


伏籠手前とは

伏籠手前とは、火取香炉という少し大きめの香炉で煉香を炷き、竹で編んだ籠(伏籠)をそのやわらかな熱源の上に置き、着物や衣を薫じるお手前です。振袖を籠の上にふんわりとかけると、香りがむっくりと立ち上り、振袖に宿っていきます。香道の中でも、もっとも特別な手前のひとつだと思っています。

——自分を、身体を、これから纏う布を整える——世界や席に出ていく前の、古からの静かな準備の所作なのです。

初代のお家元が、平安400年の香りの文化こそが日本の香道の礎となるのだから、それを踏まえての香道・・というお考えだったと伝え聞いています。


伏籠手前で心がけること

何より、焦らないこと。

香りは急かせません。そして私はいつも、この所作が約1000年以上、日本の女性たちによって繰り返されてきたことを意識しています。この一つの手前で、静かに美しさを待った過去の方々と私をつないでくれている・・そのようなことを、忘れないようにしています。


香司という資格/天然香料で大切なこと

香司は、天然香料を使った伝統的な香の調合に関する資格です。

天然香料を扱ううえで最も大切なことは——やはり「聞く」こと、です。素材はそれぞれ、独自の生きた個性を持っています。収穫された季節、保管の状態、何と合わせるかによって、同じ素材でも香りが変わる。こちらから公式を押しつけることはできません。好奇心と謙虚さを持ち続けることが、すべての始まりです。


自分だけの練香・匂い袋を作る意味

参加者が自分で香を調合すると、何かが変わります。観る人から、作る人になる瞬間です。そして香りは記憶や感情と深く結びついているから、作られたものは本当に個人的なもの——今この瞬間の自分を映した香りになる。「こんなふうに香りのことを考えたことがなかった」と言っていただけることが多くて、それがまさに私が望んでいることです。


想いと未来

海外の方に最も伝えたいこと

「静けさ」は、技でもあり、、尊いものでもあるということです。

香道では、微細なものに完全に向き合う能力を磨きます——画面も、説明も、動作も必要ない。ただ、注意を向けるだけ。そのほぼ音のない世界・空気が動かない世界です。

その力は、人間が培える最も価値あるものの一つだと思っています。


言葉を超えて「伝わった」瞬間

あります——いつも、その後の沈黙の中で。六国五味の香炉を顔に近づけた瞬間、表情がほんのすこし緩むとき。あの間を見ると、言葉では運べなかった何かが確かに届いたとわかります。香りに、言葉は要りません。


変わらず守り続けたいもの

「注意の質」です。香道はずっと、人々に立ち止まることを、丁寧に聞くことを、今ここに在ることを求めてきた。場所が変わっても、形式が変わっても、対象が変わっても——その核心は変えてはいけない。

香道がエンターテインメントになった瞬間、魂を失います。

だからこそ、私自身が出すぎないようにと心がけても、いるのです。

知らせたい方に、届けたい!という気持ちと反してしまっていますけれども・・・。


未来に向けて挑戦したいこと

一つ目は、香りを創り出すこと。

基本的には、和の香の世界を、もっと広げていきたい。

千年以上前から日本にある香りの形【煉香】が、現代の人たちの日常にもっと近づけるはずだと信じています。

そして「香氣処方」という考え方を育てていきます。

その人に合う香りは、その瞬間の気分ではなく、その人の本質的な氣に基づいて処方されるべきだという考え方から調香していくものです。

二つ目は、香道を次の世代へ繋げていくこと。

お手前の中にある 美 。

これは言葉にしても伝えきれないものがあります。

その人の意識によってどれだけ変わっていくのか、師範になってやっとわかった世界ではあります。

品位・格・教養・意識・尊厳・いたわり・愛でる・・・・

お稽古していきながら会得していくものです。

日本古来の考え方や作法の中には、やはり時代に添わないものもでていきてはいますが、逆にそれを知りたいと思う若い方々もいらっしゃいます。

香りの世界が広がり、でも制限がある中で、いかに楽しく豊かに、香りを自分にとって大事なものにしていくかの?その部分を意識していき、古からの美 につなげていければと思います。

香りは、人生の節目にこそ、深く寄り添えるものだと信じていますので、

最後まで香りとともに生きていきたいな・・・。


香道とは何か、一言で

私にとっては 背骨 です

私をまっすぐ立たせてくれるもの。

華やかな言葉じゃなくて、身体の芯にある、目には見えない、でも絶対にそこにあるもの。

取り除いたら崩れてしまうもの。

年齢を重ねていった先に、このようなご縁があり、今に至ります。

台風の日に、想いを残しておきます。

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高野 香聖のアバター 高野 香聖 香道直心流 師範 

香道直心流師範 着物着つけ技能士 書道家 占術鑑定士

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